静けさについて書いてから、かなり間が空いてしまいましたが、実のところ人は完全な静けさの中に長時間いることは難しいようです。
たとえば音響機器の開発などに使われる無響室に入ると、おそらく5分もそこに居られないとでしょう。音も振動も全く無い状態が30分以上も続くと発狂することもあるそうです。人の脳は、周りに音が無いとわかると自分の中に音を探し求めます。自分の体の中の血流、心臓の鼓動、内臓の音などがやたらと気になるようになり、精神的にバランスを崩してしまいます。
では、どの程度の音環境が人にとって良いのでしょうか。2012年にある研究チームが環境音に関して調べた結果、大きな雑音は創造性にマイナスだが、適度な雑音は創造性を必要とする仕事の効率を高めるということがわかったそうです。
人工的な雑音として、ホワイトノイズが使われることがあります。ホワイトノイズやピンクノイズはこれまでにも述べてきたように自然界の音、風や波の音にも含まれています。ホワイトノイズは、あらゆる周波数で均一な強さを持つ音であり、周りの雑音をマスキング、つまりかき消す効果があります。
だからと言ってオフィスにホワイトノイズを流せば仕事の効率が上がるかというと、実はここには個人差があります。ホワイトノイズは、人をリラックスさせる効果がありますが、リラックスして仕事の効率が上がる人もいれば、逆にリラックスしすぎて怠惰になってしまう人もいるのです。また機械的なホワイトノイズには、自然の音のようなゆらぎが無く、単調な音のため健全なリラックス効果は望めないでしょう。
皆さんも昼食後、オフィスに戻るとお腹が膨れて眠くなるという経験があると思いますが、この時近くにコンピュータの送風の音やエアコンの送風の音、つまりホワイトノイズを含む音が流れていると、さらに眠くなると思います。
では、どんな程度の音が良いのかというと、少し静かなカフェという程度が仕事がはかどるようです。図書館のように静かなほうが良いという人もいると思いますが、あまり静かすぎると逆に人の咳払いの音やちょっとした物音に敏感になってしまうかもしれません。
知り合いの作詞家のかたもよくカフェで仕事されていますが、最近は写真のようなコワーキングスペースのあるカフェもあったりします。コワーキングスペースとは、オフィスや打ち合わせスペースを共有しながら、各自独立した仕事をする共働スタイルの場です。写真は宮古島にあるコワーキングスペース、『Re:charge Cafe BREATHE』です。
いつもこんなところで仕事ができれば、とてもクリエイティブな発想が生まれるかもしれませんね。
なお、もしバックに音楽をかけるなら、集中したい場合は、できればボーカルの入っていないインストゥルメンタルの静かめの曲、ピアノを中心としたような軽快で静かな曲が良いようです。